ビジネスの設計にバックキャスティングを取り入れる

2017.08.22 キャッシュフロー改善 チームワーク ビジネス哲学 経営戦略 経営改善

 私は、金融機関の融資審査部門の顧問をしている立場から、企業の経営計画を検証する機会が多々あります。
それらの計画のほとんどは「ワクワクできない」「戦略的ではない」「分析と施策に繋がりが希薄」といった共通点があります。

 このようなよくある経営計画は「フォアキャスティング」という立ち位置に無意識に立っています。
フォアキャスティングの逆の思考立ち位置を「バックキャスティング」と呼びます。
 
 バックキャスティングとは、複数あり得る未来の中から、自分を含めてみんなにとって
「こうありたい未来」「こうあるべき未来」を最初の段階で決めてしまい、それを実現するために今なすべきことを考え、分析し、具体的に実行することです。

 バックキャスティングは、現在、起きている様々な事象の延長線上に未来があると考える方法「フォアキャスティング」とは正反対です。
バックキャスティングは、結論ありきで、その結論に至るまでの過程を具体的に実行していくことです。


(出典:一般財団法人 日本科学技術連盟)

 まず先に中長期の経営ビジョンを描き、それを踏まえたうえで、それを判断基準としておいて、現状を見る。
フォアキャスティングとは全く違った見え方になり、分析も課題形成も大きく異なってくるのです。
成し遂げたい何か?のビジョンを明確化することから現在に立ち戻ることで、改善から、「転換」や「パラダイムシフト」や「ジャンプアップ」「ブレイクスルー」
の可能性が開けてきます。
この企業はこうなりたいのか!なるほど!と読む者をワクワクさせるのです。

 一般的な経営計画は、現状分析から始まってしまうのが習慣です。
それでは視野に入ってくるものは制約条件や障壁です。制約条件を避けて通る分析と施策立案を行う方向に陥ります。

 経営に於いて、本来「制約条件」は、ゴールを達成するために「解除する対象」に過ぎません。
あるビジョンや到達点を実現するためならば…どんな方法があるか考えることこそ建設的です。
しかし、習慣的に根付いてしまったフォアキャスティングの立ち位置で作成される計画では、制約条件は解除の対象ではなく、回避の対象や、前提条件に固定されます。
このため、ダイナミックな経営に向かうことができないのです。
 
 これまでの延長線上にものを考えようとしても、これまでの事業のポテンシャルを超えることはできません。
知識や経験ではなく、立ち位置と視野にこだわって経営を見てみることで必ず会社はよくなるはずです。

(キャッシュフロー改善の専門チーム 株式会社産業育成研究所)